书名 战国小町苦劳谭
【资料图】
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作者: 夹竹桃
原作:http://ncode.syosetu.com/n8406bm/
翻译工具:ChatGPT
*机器输出的翻译结果UP未做任何修正,仅供试阅。标题章节号为原翻译版的顺延。*
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千五百七十八年 十一月上旬(*原文网页序列号 - 208)
信長の策略が功を奏し、御馬揃えは十一月上旬に実施することが確定した。
信长的策略取得了成功,御马齐整将于十一月上旬实施已经确定。
織田家に叛意(はんい)を抱く公家の心理を上手く誘導し、彼らの無茶な要望を叶える形で日程に融通を利かせたため、仮に失敗したとしても公家達の過失と強弁出来る。
成功地引导着持有对織田家叛逆心态的官僚,通过允许他们不合理的要求适当调整行程,即使失败,也可以将责任推给官僚们的过失,从而辩护自己。
とは言え、信長をはじめ裏方を引き受ける静子とてみすみす失敗してやる気などさらさらない。
然而,即使是接手扮演幕后角色的静子,也绝不会轻易放弃并且丝毫没有失败的意向。
それでも土壇場になってからの妨害を未然に防げるだけで意味がある。下手に横やりを入れようものなら公家の責任となることを噂という形で周知させたため、御馬揃えに対する妨害は自傷行為となるのだ。
仍然在最后关头阻挠并未发生时就加以防止,就有意义了。如果轻率地插手其中,便会以谣言的形式宣扬为公家的责任,对于御马队的阻挠就成为了自我伤害的行为。
こうして自縄自縛(じじょうじばく)に陥ったことで沈黙を守る公家達に気をよくした信長は、上機嫌で御馬揃えの日を待つことになった。
由于这些贵族们被自己的约束所困扰而保持沉默,信长感到很高兴,因此他充满喜悦地等待着骑马游览的日子。
「結局、私の順番は公家衆の前になったんだ」
“最终,轮到我在官员面前了。”
御馬揃えとは現代に於ける軍事パレードであり、その位置取りには政治的な思惑が絡んでいる。以下にその陣容を記す。
御马整列是现代的军事游行,其中的位置分配涉及政治因素。以下是它的编队。
先頭には史実に於いて信長から「長秀は友であり、兄弟である」とまで評された丹羽長秀が務め、織田家の中でも勢いのある家臣達が続く。
头号家臣是历史上被信长誉为“既是朋友也是兄弟”的丹羽长秀,之后是織田家中势头强劲的其他家臣。
この中には比較的新参者である明智光秀もおり、織田家家中に於ける光秀の重要性が窺い知れた。
在其中还有相对较新的成员明智光秀,可以看出他在织田家中的重要性。
これに続くのが信長の兄弟や、彼の子息たちで構成される連枝衆(れんししゅう)であり、その先頭には後継者である信忠が務める。
它后面是由信长的兄弟和他的子孙们组成的连枝衆,由继承者信忠领导。
長男である信忠に続くのは、何かと不祥事を起こして問題視されている次男の信雄(のぶかつ)、めきめきと頭角を現しつつある三男の信孝(のぶたか)、これに続く形で信長の弟に当たる信包(のぶかね)が配され世代交代を強調する意図が見えた。
长男信忠之后,接连发生了许多丑闻问题备受关注的次男信雄,以及正蓬勃发展的三男信孝,接着是代表着世代交替意义的信长弟弟信包被任命,意图彰显世代更替。
次に配されるのが織田家の懐刀であり、武家と公家を繋ぐ者となった静子である。連枝衆よりも後方に配されることに対してひと悶着あったのだが、そこは信長による鶴の一声で封殺されている。
接下来配备的是织田家的得力干将,成为连接武家和官家的人静子。虽然有一点不满被分配到后方而非联营众人之中,但这一问题在信长的一声令下被压制了。
東国管領という高い役職を抱く静子に続くのが、武家と対を為す公家衆であった。
紧随着担任东国管领这一高职的静子,是作为武家对应的官家一众。
公家衆の先頭を務めるのは静子の義父に当たる近衛前久(さきひさ)である。准三后(じゅさんごう)(皇族以外で皇族と同等とする身分)を認められており、関白の座に就いていることからもこの位置なのだ。
领导公家众的是静子的岳父近卫前久。他被承认为准三后(与皇室成员同等的身份),并且因担任关白之职而担任此职位。
公家衆内での並びは概ね官位順であり、この順番によって朝廷での権勢が判る。
公家内部的排列通常按照官位顺序进行,根据这个顺序可以判断他们在朝廷中的权力。
公家に続くのが信長お気に入りの騎馬兵こと、赤母衣(ほろ)衆と黒母衣衆に小姓たちが続いた。
紧跟在官员之后的是信长钟爱的骑兵,分别是红衣者和黑衣者,接下来是侍从们。
これらに続くのが越前衆と呼ばれる集団であり、柴田勝家を筆頭とした越前攻略を務めた武将たちが並ぶ。
这些之后便是被称为越前众的团体,其中包括以柴田胜家为首的武将们负责越前攻略。
越前衆と部隊を同じくするのが越後衆であり、織田家に臣従する形で同盟を結んだ上杉謙信率いる武将が肩を並べた。
越后军是与越前军同属一支部队的武士,在效忠织田家的形式下,与由上杉谦信率领的武将结成同盟,肩并肩地战斗。
更に続くのは色物集団であり、信長が主催した角力(すもう)大会で優勝した力自慢の力士が務める。
此外,还有一个色彩鲜艳的群体,由在信长主持的相扑大赛中获胜的强壮力士组成。
そして最後に大トリを務めるのが信長という布陣となる。
最后一个表演者是以信长的阵容完成的。
御馬揃えの順番が決まると、静子は諸将の受け入れ準備などがあるため先んじて京入りをした。
当马队的队伍排列好之后,静子去京城等待其他将领的到来,并且准备欢迎他们。
遠地より訪れる越前衆などは一週間前に京入りを予定しており、現場が混乱しないよう関係各所と調整をする必要がある。
远道而来的越前群等人预计一周前就到京都了,因此需要与相关部门协调以确保现场不会混乱。
事前に受け入れ場所などを選定し、根回しも済んでいるのだが信長肝煎(きもい)りの御馬揃えだけに諸将も予定外の行動をとり勝ちなのだ。
事前确定了接待场所等事宜,并已做好了根基工作,但由于诸将全部致力于丰富的马队装扮,因此他们采取了超出预期的行动并赢得了胜利。
事前に申告していた以上の人員を帯同していたり、民たちの度肝を抜こうとして余計な騒動を起こしたりする。
带着超出事先申报的人数或试图震慑人们并引发不必要的骚动。
発奮の機会を得て意気込む気持ちは分からないでもないのだが、そのせいで御馬揃えにケチがついては本末転倒であった。
得到振奋的机会并兴致高昂的心情,我不无理解,但这却导致了阵容混乱,事倍功半。
そして、そんな諸将らを角が立たないように調整出来るのは、信長を除けば静子しかいない。
除了信长以外,只有静子能够调节这些将领,以免引起不满。
信忠も東国征伐で手柄を立て、信長の後継者として認められつつあるが、それでも年若いことから軽んじられることが少なくないのだ。
信忠在东国征伐中立下功劳,正被认为是信长的继承人,但由于年轻经常被轻视。
「此度の御馬揃えは上様が音頭を取っておられます。これに水を差さんとする輩はその出自如何に拠らず、厳罰を以て対処しなさい」
“此度的御马整顿由上方带头,任何试图破坏此次活动的人都将严惩不贷,不论其身份如何。”
温厚篤実(とくじつ)な女性であり、控えめな態度を取るが故に静子も侮られることが多いのだが、必要だと割り切れば非情にもなれる人物であることは織田家重臣の間では皆が認めるところである。
她是一个温和坚实(とくじつ)的女性,虽然采取谦虚的态度,但静子也经常被轻视。然而,在确定必要性时,她可以成为一个无情的人,这是織田家重要人物普遍认可的。
こうして静子が腹を括って綱紀粛正の号令を発すると、真っ先に行動で示したのが長可(ながよし)である。
在静子下定决心宣布纪律整顿的号令之际,第一个采取行动的是长可。
取り締まりの為だという大義名分を得た長可は、静子の言葉通り誰であろうと騒動を起こす者へ一切の躊躇なく拳を振るった。
为了取缔行为,长可得到了表面上的正当理由。她像静子说的那样,毫不犹豫地揍打任何制造骚乱的人。
「人は数が集まり、熱くなってしまえば我を忘れる阿呆が必ず出る。そういう奴には口で言っても無駄だ、先に拳で黙らせてから話をするのが一番だ!」
「人们聚集在一起,如果过度兴奋,就会有忘我愚蠢的人出现。对于这样的人,口头上说是没用的,最好先用拳头打断他们的话再与他们交谈!」
己の父より年上の者だろうが容赦なく鉄拳制裁を加える長可に対し、家臣が多少の手心を加えてはどうかとの進言への返事が前述のものとなる。
面对比自己的父亲年长的人,也毫不留情地进行拳打脚踢的长可,对于家臣们提出的稍微宽容一点的建议,答复如前所述。
彼は己の行いに何ら恥じるところがないと言い切り、身分の上下や老若男女を問わず平等に取り締まった。
他自信说自己没有丝毫羞愧之感,不分阶层和年龄性别对所有人进行了平等的管理。
その甲斐あってか御馬揃えを一目見ようとする民たちや、御馬揃えに加わる者たちも一様に頭を冷やす結果となる。
由于这一结果,想要一睹阅兵和参加阅兵的人们都变得冷静。
そして十一月十二日、遂に信長待望の御馬揃えが開催される。
然后在十一月十二日,终于举行了信长期望已久的马队阵列。
信長は勿論のこと、静子を筆頭に多くの家臣たちがこの日の為に様々な準備を重ねてきた。
信长当然首当其冲,加上以静子为代表的许多家臣为了这一天进行了各种准备。
残念ながら史実通り、秀吉は毛利戦の兼ね合いで参加することが叶わない。
很遗憾,按照历史的事实,秀吉由于与毛利家的战争而无法参加。
怨念が墨に籠っているのではと思うほど筆跡の乱れた、本人自筆の文を静子が受け取っている。
静子收到了由本人手写的文字,由于字迹混乱,她开始怀疑是否被怨念笼罩。
西国攻めの最前線であるため電信装置が置かれており、信長と秀吉は通信使を介して連絡を取り合っていたのだが、ついぞ秀吉帰還の陳情が許可されることは無かった。
西国攻略的最前线设有电信设备,信长和秀吉通过通信使彼此联系,但秀吉的归还请求始终未获批准。
御馬揃えへの参列を熱望していた秀吉も、流石に自分が抜けたせいで毛利に負けたとなれば取り返しがつかないため、泣く泣く参加を見送る決断を下した。
丰臣秀吉也渴望参加御马列队,但他明智地决定放弃参加,因为如果他缺席导致毛利赢了,那后果将不可挽回。
代わりに雰囲気だけでも味わいたいとの要望があり、是非とも写真を撮影して送って欲しいと懇願されることとなる。
由于有人希望能够体验氛围,因此请求拍照并发送照片。
静子はこれを快く受け入れ、予定よりも撮影班を増やして対処することとした。
静子欣然接受了这一决定,增加了拍摄团队来应对这种情况。
記録魔と異名を取る静子だけに、記録媒体であるガラス乾板式フィルムの増産を既に行っており、三人一組の撮影班が沿道のあちらこちらに配置されて京の民に写真の存在が印象付けられることとなる。
以被称为记录魔的静子为名,她已经开始增加玻璃底片胶片的生产,三人团队的拍摄组在京城周围的各处安排,使京城市民留下摄影存在的印象。
「ようやくだね。開催までに紆余(うよ)曲折(きょくせつ)あったけれど、今日という日を無事迎えられたことを喜びましょう」
「终于到了呢。虽然在举办之前经历了波折,但现在我们能够无事迎来今天,让我们感到喜悦。」
静子が言うように開催するまでに裏で多くの血が流れた。お祭り騒ぎの熱に浮かされて粛清された者などは可愛い方で、なんとこの期に及んでさえもならず者を雇って御馬揃えを妨害しようとした者さえいたのだ。
正如靜子所說,在舉辦之前,背後流了大量的血。在節日的狂熱中,被清除的人們只是其中可憐的一部分,直到這個時期仍然有人雇用歹徒來阻撓遊行。
これに対する信長の対応は苛烈であった。二度と反抗しようなどと思わぬよう、徹底した報復が実施される。
信长对此的应对非常残酷。为了防止再次反抗,实施了彻底的报复。
一罰百戒を地で行く粛清に、反織田を掲げていた公家達は震えあがった。
一罚百戒在地上执行的肃清令,挂着反织田的公家们颤抖不已。
信長の警告が身に染みたのか、それ以降は大過なく準備を進めることが出来ている。
自从感受到信长的警告后,此后能够无大过地推进准备工作。
それほどまでに信長が拘った御馬揃えには、時の帝こと正親町(おおぎまち)天皇も臨席される天覧のイベントであるため、日ノ本中の有力者が一堂に会することとなった。
因为信长非常关注他的骑马队,所以该事件是由当时的天皇正亲町出席的天际事件,日本的有权势者也一同聚集在一起。
朝廷だけでなく武家、果ては仏家からも多くの有力者が集う。これだけの面子が揃うとなれば、機を見るに敏な商人がこの機会を逃すはずもなく、普段は堺から動かない大商人たちも挙って押し寄せた。
不仅朝廷,武士和佛教徒也聚集了许多有权势的人。如果有这么多的面孔,敏锐的商人就不会错过这个机会,通常不会离开堺的大商人也都赶来了。
実質的に日ノ本を動かしている面々が揃うこととなり、それだけの相手を前に信長が天下を掌握したと知らしめるのだから御馬揃えがどれ程重要なイベントであるかが理解できよう。
实际上掌控着日本的人物聚集在一起,信长面对这样的对手,才能让天下知道他已经掌握了权力,这正是御马揃的重要性所在。
「うーん。気持ちは判るけれど、流石にこれは派手過ぎない?」
“嗯。虽然理解你的感受,但这也太过张扬了吧?”
そうぼやきながら静子は己の恰好をしげしげと眺める。騎乗するため馬乗り袴(はかま)をベースにしているのだが、静子の袴は単色ではなくグラデーションが施されていた。
发牢骚的同时,静子一边仔细地观察着自己的装扮。她以马裤为基础进行骑马,但是静子的马裤不是单色的,而是有渐变效果的。
紫を基調として鮮やかな緋色へと移ろう様は美しく、貴色とされるが暗くなりがちな紫を配しているのに、艶(あで)やかに見える。
紫色作为基调,变化到鲜艳的绯红色非常美丽,尽管紫色有时会看起来很沉闷,但这种变化却显得光彩夺目。
また袴の膝より少し下あたりから太股の中ほどまでに亘って幾つもの小さな花が縫いつけられていた。
膝盖以下裤腿内侧到大腿中部有多朵小花缝在上面。
しかも単純に直線に並ぶのではなく、色の変化に合わせて流れるように配されており、しかも花の中央には所謂(いわゆる)スパンコールが施されているため光を反射して大層目を惹く仕上がりだ。
而且不仅仅是简单地排成一条直线,而是根据颜色变化流动地布置,而且在花的中心点还施有所谓的亮片,反射光线,最终呈现出非常抢眼的效果。
このスパンコールも金属片などの安っぽい物ではなく、薄い樹脂に対して螺鈿(らでん)を施した高級品であるため、輝いて見えるというのにギラギラとした下品な印象にならない。
这些亮片不是廉价的金属片等材质,而是经过施加珐琅饰面的高档产品,闪闪发光但不会给人低俗的印象。
上着に関しては袴が小さな花の意匠に対するように、大きな花の刺繍(ししゅう)が散りばめられていた。
上衣上,大花刺绣点缀其中,以响应小花纹样的半裙设计。
更に髪を纏(まと)める為に挿している簪(かんざし)は、鼈甲(べっこう)の芯材から金属で作られた緋牡丹が幾つも小さな銀鎖でぶら下がるという豪華絢爛(けんらん)なものとなる。
为了进一步整理头发,插在头上的簪子是由玳瑁中心材料制成的金属大红芍药,用许多小银链悬挂,非常华丽。
今回自分の衣装を用意した彩と蕭(しょう)がやたらと花に拘っているなと思っていたが、実際の御馬揃え当日を迎えてみて初めて彼女たちの意図に気が付いた。
这次自备衣装的彩和萧似乎对花特别在意,我一直觉得奇怪。直到迎来了实际的游行当天,我才意识到她们的意图。
それは周囲の誰も彼もが挙ってド派手な恰好をしており、金や銀で彩られた勇壮さや猛々しい印象を与えるのに対し、静子の衣装は女性らしい優美さを示しつつも大輪の花が咲き誇るかのように目を惹く仕上がりとなっている。
每个人都穿着华丽的衣服,闪烁着金银的光辉,展现出勇敢和野性,但静子的服装则展示出女性般的优美,花朵般绚烂夺目的成品。
御馬揃えは軍事パレードであるため、己の武威を示さんとする方向性を持っており、皆がそれぞれに己の存在を誇示せんと工夫を凝らすことから主張が弱いと埋没してしまう。
由于御马齐整是一次军事游行,因此具有展现自己武力的方向性。每个人都想炫耀自己的存在,若不下功夫进行创新设计,主张将变得微不足道而被淹没。
それを逆手に取り、真逆の方向性で嫋(たお)やかかつ華麗な装いが醸(かも)し出す異色さは自然と周囲の目を集め、彩と簫の面目躍如といった処だろう。
把这个想法运用到完全相反的方向,展现出优雅华丽的装扮,这种独特的风格会吸引周围人的注意,成为引领潮流的代表。
(そういう意味では優美ではあるけれど、ギリギリ軍装の域を出ない絶妙なバランス感覚だよね)
(从这个意义上说,它是优美的,但它只是在军装的边缘上保持平衡的精妙感觉。)
振袖や着物ほど派手ではないものの、鮮やかな色使いで女性らしさを主張するセンスの良さに、改めて静子は彼女らの尽力に感謝した。
虽然不像振袖或着物那么华丽,但是她们运用鲜艳的色彩宣扬女性的娇柔风情,静子再次感激她们的努力。
御馬揃えが終わったら何らかで報いないといけないなと思いつつ、静子は己の順番が来るのを待っている。
众人悉数列队完毕,静子心中犹豫,觉得必须得想个什么方法来报答一下。接着,她静静地等待着自己的轮到来临。
イベントの開催に尽力した第一人者となる静子だが、自身も参列する以上は出番が来るまで不用意に動き回ることが出来ない。
虽然静子是努力举办活动的第一人,但她自己参加时,在轮到她时才能行动,不能轻率地四处动荡。
撮影班に任せるのではなく、己の目で御馬揃えの隊列を真正面から眺めたい誘惑に耐えていると不意に声を掛けられた。
不是把拍摄交给班组,而是忍住了想亲眼从正面观看整齐队列的诱惑,突然听到有人喊我。
「義姉上、ご機嫌は如何ですかな?」
「姐姐,您心情如何?」
うずうずしている様子を隠せない静子に声を掛けたのは、義父こと前久の嫡男にあたる近衛信尹(のぶただ)であった。
静子掩饰不了自己焦躁的样子,正当这时,称作前久的義父长子近卫信尹出声相问。
彼自身は御馬揃えに参列しないが、実父が公家筆頭を務めることから後学のためにと臨席している。
他本人虽未参加随驾行列,但由于实际上他的父亲担任着公家首席的职务,所以他出席此次场合是为了将来受其教诲。
しかし、その装いは全く普段と変わらないものであるため、皆がこぞって着飾っている中に於いては相当に浮いて見えた。
然而,由于它的打扮完全没有改变,因此在每个人都穿着华丽的场合中,显得相当不协调。
尤(もっと)も彼自身は他者からどう思われているかなど意にも介さないため、泰然として振る舞っている。
由于他自己并不在意别人对他的看法,所以他很沉着地行事。
「今の処順調だよ。もうすぐ一番部隊の丹羽様らが出発なされるんじゃないかしら?」
「现在进展顺利。不久之后,丹羽队长他们应该就要出发了吧?」
「義姉上は確か六番部隊に当たるのでしたね。予定通りに進行すればご出発は昼前頃になるかと伺(うかが)っております」
“我记得我的姐姐被分配到第六部队。根据计划,您将在中午左右出发。”
「予定通りいくと良いんだけれどね」
“希望按照计划进行,但谁知会怎样呢。”
遠くへ目線を投げながら静子は呟いた。御馬揃えは信長の号令一下、主要な武将らが総出で臨む大規模イベントだ。
远处,静子低声说道。马会是以信长的号令为开端,主要武将都会全员参加的大规模活动。
入念に準備を整え、跳ねっ返りを粛清することで規律を保っているが、いざ大観衆の歓声を浴びて高揚すれば羽目を外す者も現れよう。
精心准备、清除反弹现象以保持纪律,但一旦沐浴观众的掌声、感情高涨,也会出现一些人放飞自我。
そういった行動に出る恐れのある者は事前に調べ上げ、傍らに彼らを掣肘(せいちゅう)出来るものを配してある。
可能会采取这种行动的人会被事先调查,旁边会配备能够约束他们的人。
とは言え不測の事態というのは起こるものであり、運営側となる静子は気を揉んでいた。
然而,意外事件是不可预测的,作为管理方的静子感到很担心。
「そういった不慮の事態をも楽しんでこその御馬揃えでしょう。そう考えた方が気楽ではありませんか?」
“这种意外事件只有在享受了它们之后才能组织出一场完美的盛会。这样想不是更轻松吗?”
「……そんな風に開き直れれば良いんだけれどね。一世一代の大舞台だからこそ、私の失敗が歴史に刻まれると考えたらお腹が痛くて……」
“……如果能像那样做到豁达一些就好了。毕竟这是一生中只有一次的大舞台,一想到我的失败会刻在历史中,就让我感到很痛苦……”
「義姉上は既に人事を尽くされておりまする。ここで何らかの事故が起こったとして、義姉上が責を負う必要はございませぬ。問題を起こしたものに帰するべきかと」
“姐姐已经尽了她的职责。如果发生了什么事故,姐姐不需要承担责任。问题应该归咎于造成问题的人。”
「それはそうなんだけど…… ここまで来たら平穏無事に終わって欲しいよね」
"虽然是这样,但是到了这一步,最好能顺利平安地结束啊。"
「お気持ちお察しいたします」
我能理解你的感受。
静子が控える待機所から遠く離れているにもかかわらず、ここにまで届いてくる喧騒に耳を傾けながら静子はため息を吐いた。
即使静子远离等候区,也能听到喧闹声,她叹了口气。
諸将やその家臣達も意気衝天(いきしょうてん)たる様子を隠そうともせず、御馬揃えに臨む意気込みが並々ならぬことが察せられる。
各将军和他们的家臣都意气风发,毫不掩饰他们的兴奋,可以感受到他们备战时的热情。
好事魔多しのたとえにあるように、このような時こそ問題が起こると危惧する静子は、どうか無事に終わりますようにと神仏に願うのだった。
就像“好事不多,坏事千万”的比喻一样,静子担心问题会在这个时候发生,因此向神佛祈求一切顺利。
「普段熱心に信仰していない身からすると憚(はばか)られるんだけれど、ここに至っては神仏にお縋(すが)りするしかないよね」
“从平常不热心信仰的人的角度来看,虽然有点不好意思,但是现在只能依靠神佛了吧。”
「義姉上の願いが聞き届けられんことを祈っております」
「祈祷姐姐的愿望得以实现」
そんな信尹の応(いら)えに苦笑を浮かべる静子に一礼すると、彼はこの場を辞した。
在看到信尹的回应后,静子露出了苦笑并向他鞠了一躬,然后他便离开了这个场所。
会話を終えた静子が改めて進行状況を確認する。既に三番部隊までが出発しており、四番部隊の先頭が出発の合図をやきもきしながら待っている状態だ。
结束谈话后,静子再次确认了行进状况。前三个部队已经出发,第四个部队的队首正在焦急地等待出发信号。
意外に長く話し込んでいたのだなと考えながらも、静子は自身の順番である六番部隊の先頭で待機していた。
在想着自己不知不觉地谈了很长时间的情况下,静子目送着排队到第六序列的队伍,守在队伍最前方等待出击。
すると五番部隊の先頭を務めるはずの信忠が騎乗したまま静子の許へやってくる。
然后,原本应该领导第五队前往静子处的信忠骑着马直接来到了静子的面前。
彼の顔に緊張はなく、どちらかと言えば時間を持て余している様子が窺(うかが)えた。
他的脸上没有紧张的表情,相反地显得有些浪费时间的样子。
「よう、静子。俺の暇潰しに付き合ってはくれまいか?」
“喂,静子。能陪我消磨时间吗?”
「これは若様、ご機嫌麗しゅう。勿論、お望みとあらば喜んで」
"这位年轻的公子,您好。当然,如果您有任何愿望,我们将很高兴满足您。"
「堅苦しい物言いはよせ。楽にせい」
“不要说艰难的话。让自己感到轻松。”
お互いに何度も繰り返したお決まりの手順を経て言葉を崩す。
互相重复多次惯常的步骤后打破话语。
静子と信忠は長い付き合いながら、信忠は信長の後継者である。
静子和信忠有着长久的交往,然而信忠是信长的继任者。
家臣である静子が、主君の跡継ぎに対してぞんざいな物言いをしていると、信忠が静子に軽んじられていると周囲が誤解する可能性があった。
如果家臣靜子對於主君的繼承人使用不當言語,那麼有可能會產生誤解,認為忠信被靜子輕視。
それ故に、最初は上下関係を意識した言い回しを用い、信忠が礼を排するように命じて言葉を崩すのが常となっている。
因此,最初使用了强调上下关系的措辞,并命令信忠摒弃礼节而故意混淆措辞,这成为了常态。
まったく迂遠(うえん)なことだと思いつつも、これで面倒が回避できるなら必要な手間だと考えていた。
尽管我认为这是一个非常繁琐的事情,但考虑到可以避免麻烦,我认为这是必要的步骤。
「そう言えば面白い話を二つほど小耳に挟んだぞ? 何でも珍しい鉱石が見つかったとかで足満が土佐(とさ)国に赴いておるらしいな。他にも九鬼水軍を使って外洋航行の準備をしていると聞き及んだ、確か青ヶ島(あおがしま)と言うたか?」
“顺便说一下,我听说了两个有趣的故事。据说发现了一种罕见的矿石,足满正在前往土佐国。此外,我听说他们正在准备使用九鬼水军进行海上航行,好像是在青ヶ島。”
「本当に耳が早いね」
"你的耳朵真的很灵敏" (nǐ de ěr duo zhēn de hěn líng mǐn)
足満が土佐に向かっているのは未だ信長にすら報告していない極秘の情報であり、何処から信忠が聴きつけたかが気にかかるところだ。
足满正朝向土佐而行,这是极其机密的消息,甚至连信长都不知道,让人不禁想知道信忠是从哪里听到的。
また足満の目的までをも察知していることから、鉱山技師か掘削機材の技師あたりに見張りを付けているのだろうと察する。
由于它能够察觉到足满的目的地,因此我猜测它可能会派看守来监视矿山工程师或挖掘机设备技师。
目論みが外れた折に肩透かしをさせるのも悪いと考え結果が出るまで伏せていただけで、別段隠すほどでもないと判断した静子は口を開いた。
静子认为即使计划失败也不应该让别人失望,所以她选择保密直到结果出来,而且她也认为没必要刻意隐瞒,于是她开口说话了。
「私は鉱石とかは良く判らないんだけれど、足満おじさんが日ノ本を統一するためには絶対に必要となる鉱石だって張り切っていたんだよ」
“虽然我不太懂矿石,但足满老爷子为了统一日本,对这种矿石很是兴奋。”
「絶対に必要とは大きくでたな。それはこの辺りでは採れない物なのか?」
“绝对必要这个词用得太夸张了。这里没有能采集到的东西吗?”
「量とか質に拘らなければ比較的色々な場所で採れるとは言っていたけど、本土から切り離された四国が理想的な位置にあるんだって」
“如果不拘泥于数量和质量,就可以在相对各种各样的地方采摘,但是四国被隔离在本土之外,处于理想的位置。”
「それで重要な鉱物っていうのは何なんだ?」
"那么,什么是重要的矿物呢?"
「まずはマンガンだね。クリプトメレンって言うぶどうの粒みたいな形をした黒っぽい塊がいくつもくっついた石が見つかったんだって。それで付近の試掘を続けていたら、菱(りょう)マンガン鉱って言う赤く透き通った菱型の石が纏まって出土したから本格的に採掘するらしいよ」
首先是锰。据说发现了一些形状像葡萄粒的黑色块状物质附着在石头上。随后,在附近继续试掘,发现了被称为菱锰矿的红色透明菱形石头集中出土,因此似乎会开始正式采矿。
「くりぷ……なんだって? その『まんがん』とやらは何が出来る?」
“克里普……你说什么?那个‘满贯’是能做什么的?”
「さっきから質問ばっかりだね。えーと、足満おじさんが言うには鉄より硬い鋼をより硬くしなやかにするために必須の物質なんだって」
“刚才开始一直在问问题呢。嗯,据脚满叔叔说,钢比铁更硬更有韧性,是必需的物质。”
「なるほど、より硬い鋼か。確かに小田原攻めでも大砲が強度不足で割れたからな、強い鋼は重要だろう」
“原来是更坚硬的钢啊。确实在小田原攻打中大炮因强度不足而炸裂了,因此强度强的钢材非常重要。”
信忠はそう呟くと沈思黙考しているのか、目を瞑(つむ)って考え込んでいる様子だ。
信忠这么嘀咕着,似乎在陷入沉思的状态,闭着眼睛沉思着。
実は他にもクロムを含んだ鉱石であるクロム鉄鉱と灰クロム柘榴(ざくろ)石が見つかっているとの報告も上がっていた。
实际上,还有报告称已发现了含铬矿物的铬铁矿和灰铬榴石。
材料工学や地質学に関してはまるで知識を持たない静子からすれば、何が重要なのかサッパリ判らなかったのだが足満によるとクロムがあればステンレスも作れるそうだ。
对于完全没有材料工程或地质学知识的静子来说,不知道哪些是重要的。但足满说如果有铬,就可以制作不锈钢。
非常に錆びにくいことで有名なステンレスの利便性は静子でも理解できたため、期待に胸を膨らませずにはいられない。
非常著名的不易生锈的不锈钢的实用性让静子也理解了,让她充满期待。
一気に詰め込んでも理解できないだろうと足満が説明を省いているのだが、ニッケルとクロムから合金を作れば電熱線で有名なニクロム合金となり、これを高炉に組み込むことが出来れば扱える金属の幅が増える。
省略了解释,足満说:“一口气塞进去也理解不了吧?”用镍和铬制造合金可以制成电热丝著名的镍铬合金,如果将其安装到高炉中,可以增加可以处理的金属范围。
他にもアルミを調達することが出来ればカンタル合金と呼ばれる高温に耐える発熱体を作ることも可能となる。これでコイルを作成し、電気炉を作ることが出来たなら他国とは隔絶した技術的優位性を持つこととなるだろう。
如果能够找到其他铝材料的话,就可以制作出能够耐受高温的发热体-被称为康铁合金。这样一来,如果成功制作出线圈并制造出电炉,我们将拥有与其他国家相隔绝的技术优势。
「おっと、考えこんでしまったな。それで九鬼の連中には何をやらせているんだ?」
“哦呵,我想得太多了。那么你让九鬼一伙干了些什么?”
九鬼水軍は織田軍に於いて海軍の主力を担っているのだが、これとは別にもう一つの大きな役割があった。
“九鬼水军在织田军中担任海军的主力,但除此之外还有另一个重要角色。”
それは外洋航行に向けた補給拠点となる島の探索である。
那是为了寻找作为远洋航行补给基地的岛屿。
幾ら静子らが齎した技術によって造船技術や食料保存技術が向上しようとも、現代のように無補給で数か月以上もの航海を続けることは容易ではない。
无论静子等人带来了多少技术改进建造船只和食物保存,如今仍不容易在没有补给的情况下连续航行数个月之久。
それ故に、必ず中継地点となる補給基地が必要となるのだ。
因此,必须建立补给基地作为必要的中转点。
幸いにして静子が信長に献上した世界地図があるため、彼女は信長と綿密な打ち合わせをしながら補給基地となる島の候補を絞っていった。
幸运的是,静子向信长献上了一张世界地图,因此她与信长进行了详细的讨论,逐渐筛选出了作为补给基地的岛屿候选。
そしてその補給基地となる第一弾が青ヶ島であった。本土から離れること三百五十キロメートル以上という場所に存在する孤島であり、鎌倉時代に成立した『保元(ほうげん)物語』に海難事故の記述が存在する。
而第一個補給基地就是在青ヶ島建立的。這是一個位於距離本土超過三百五十公里的孤島,成立於鎌倉時代,『保元物語』中記載了一次海難事故。
翻(ひるがえ)って戦国時代の青ヶ島は、恐らく無人島と思われることから沿岸部に簡易的な港と、物資集積拠点を構築することを目指した。
被认为是无人岛的青之岛在翻转到战国时代后,旨在沿岸建立简易港口和物资集中点。
当然のことながら計画が順調に運ぶはずもなく、一回目の遠征は僅か五日で旗艦のエンジントラブルによって帰投することとなる。
当然,计划不可能顺利进行,第一次远征仅进行了五天,旗舰因引擎故障而不得不返回。
これを元に問題点を洗い出して計画を修正し、改めて船団を組みなおして行った二回目の遠征は予定日を超えても帰還しなかったため捜索隊を派遣し、航路の途上にある御蔵島(みくらじま)で立往生していた艦隊を救助して帰還する結果となった。
根据此进行问题排查并修正计划后,重新组建船队进行的第二次远征超过了预定返回日期,因此派出了搜救队,并在途中的御藏岛救助了被困在那里的舰队,最终返回。
それ以降も幾度となくトラブルに見舞われ、何度も計画の修正を余儀なくされた。
之后,我们屡遭麻烦,不得不多次修改计划。
大きな成果を上げられないまま、無為に資源を浪費するとして周囲から陰口を叩かれながらも挑戦を止めなかった。
不停止挑战,即使被周围人议论为浪费资源而无法取得大成就。
数々の失敗を乗り越えた先にこそ栄光が待っていると静子も頑として計画中止に首を振らない。
静子深信,在经历数次失败之后,成功的荣耀就在前方等待着她,因此她不会轻易放弃她的计划。
それでも航海の度に航海日誌から海図を更新し続け、ようやく青ヶ島への往復航路を確立するに至るという経緯があった。
然而,每次航海后,我们仍然继续更新航海日志上的海图,最终才确立了前往青之岛的往返航线。
信忠の言から察するに、彼は計画の概要を既に掴んでいることが窺える。とは言え外洋遠征の目的地や展望については大っぴらに語って良いものでもない。
从信忠的话语可以推断出,他已经掌握了计划的概要。虽然如此,关于海外远征的目的地和展望,不应该公开谈论。
しかし、下手に隠し立てして彼の好奇心を刺激しては『藪(やぶ)をつついて蛇を出す』事になりかねないと判断した静子は、ある程度情報を開示することにした。
然而,静子认为过分隐瞒会激起他的好奇心,可能会导致“探囊取物”的结果,因此决定适当地披露一些信息。
「どうせ君のことだから黙っていたら勝手に調べるだろうし、必要な情報だけ教えるね」
“反正你这个人如果不说会自己私下调查,我只会告诉你必要的信息。”
「おいおい、人聞きの悪い事を言うなよ。俺を一体なんだと思っているんだ」
“喂喂,不要说听起来难听的话啊。你到底把我当成什么了啊。”
「好奇心からすすんで危険に身を晒す猫かな?」
“难道是出于好奇心才会置身于危险之中的猫咪?”
痛い処を突かれたのか、信忠は露骨に静子から目を逸らした。彼の態度に思わず苦笑するも、好奇心旺盛なのは信長の血なのだろうと諦めることにする。
感到疼痛的信忠明显地避开了静子的目光。看着他的态度,虽然有些苦笑,但也只好认为对于好奇心旺盛的信长来说,这是基因的问题。
「しかし、貴様のことだから人知れず成功を納めていると思っていたぞ」
"但是,基于你的天赋,我一直认为你已经在默默地取得成功了。"
「人をなんだと思っているのよ。幾ら技術があっても、経験が無ければ外洋航行なんて無理だよ。航海期間が伸びる程に不測の事態が発生しやすくなるからね」
“你以为人是什么?就算拥有高超技术,没有经验也无法进行远洋航行。航行时间越长,意外事件也越容易发生。”
「地道な努力の積み重ねってやつか。あ、父上の後で良いから俺も外国(とつくに)(日本以外の国のこと)へ行ってみたい」
“这就是通过地道的努力积累起来的吧。啊,等父亲回来后,我也想去外国(指除日本以外的其他国家)看看。”
「……上様の許可が下りたらね」
"如果得到上様的允许的话"
信長の後継者を不安定な航海に帯同するのはリスクが高すぎる。
"将信长的继承人带到不稳定的航海中是非常高风险的。"
静子は信長から許可が得られない限り、信忠を船に乗せるつもりはない。
静子不打算让信忠上船,除非她得到信长的许可。
海が荒れれば沈没することもあるし、そうでなくとも遭難する可能性が高い航海に後継者を連れて行くなど論外だ。
如果海洋变得汹涌,带继承人进行高风险的航海,即使没有沉没的风险,也很可能遇险,这是不可取的。
(船が沈没したり、遭難したりした際のサバイバル訓練も必要かな?)
(船只沉没或遇险时需要进行求生训练吗?)
船が沈んだり、遭難してしまったりした際にもサバイバルキットと知識及び技術があれば、生存できる可能性を高めることが出来る。
当船只沉没或遇难时,如果有生存工具、知识和技能,就有可能提高生存率。
問題があるとすれば、そのような知識を静子が持ち合わせていないことだろう。
如果有问题,那就是静子缺乏这种知识。
「何だつまらんな。南蛮人の住まう土地を一目見たかったのだが」
"真无聊,本来想看一眼蛮夷居住的土地的。"
「そんなお気楽な航海じゃないんだけどね」
“不过这可不是那么轻松的航海啊。”
「無論知ってはいるが、日ノ本の外にある世界を見てみたいではないか!」
"无论知道了,不想看看日本以外的世界吗!"
「まずは上様の天下統一が先だね」
"先要统一上阁下的天下"
「それはその通りなのだが…… おっと、そろそろ刻限のようだ。迎えがきてしまった。じゃあな静子」
“那是对的,但是……哦,时间到了。该回去了。那么,静子再见了。”
信忠が不意に静子から視線を外すと、連枝衆の部隊から信忠を迎えに来た近侍の姿があった。
当信忠不经意地将目光移开静子时,他看到一名侍从从连枝军队那边过来迎接他的身影。
若干慌てた様子で静子に別れを告げると、信忠は彼女の返事を待たずに立ち去る。
告别了静子,信忠匆忙离开,没有等待她的回答。
思わず呆気に取られていた静子だが、状況を確認すると四番部隊が既に出発を始めており、五番部隊となる信忠がゆっくりしている時間ではない。
静子被吓呆了,但确认情况后发现四番部队已经出发了,而成为五番部队的信忠已经没有时间继续拖延。
それぞれの部隊規模が大きいため、六番部隊である静子の出番はまだもう暫く掛かりそうだが、そろそろ準備を始めるよう静子は家臣に命じた。
由于每个部队的规模都很大,因此静子作为第六部队的角色可能还需要一段时间,但静子命令家臣开始准备。
「さて我々も――」
"那么我们也——" (Nà me wǒmen yě——)
「おや、こんな所にいたのですね」
“哦,你在这种地方啊。”
静子が部隊の隊列へ戻ろうとした瞬間、狙いすましたかのように義父である前久が声をかけてきた。
在静子试图回到队伍队列的瞬间,就像是有预谋一样,她的岳父前久叫住了她。
今日は千客万来だなと思いつつも静子は前久に向き直る。彼は多くの公家を伴っており、それを見た静子は疑問を抱く。
今天虽然想着客流络绎不绝,但静子转向前久时,他身旁还跟随了许多官员,这让静子心生疑问。
前久が自分を訪ねる際に、ぞろぞろと取り巻きを連れて現れたことなど一度としてなかった。
当前久访问自己时,从未出现过带着一众跟班的情况。
そもそも関白たる前久が望めば、取り巻きの同道を許さないことなど造作もない。
如果前久作为关白想要,不让旁人跟随也不是什么难事。
それにも拘わらず今日に限って取り巻きを引き連れているのは、何らかの思惑があるのだろうと察する。
不过,今天却引来了一帮子人围着他,我想他一定是有什么打算的。
しかし、相手は魑魅(ちみ)魍魎(もうりょう)の渦巻く朝廷を動かす人物、静子程度ではとうてい前久の真意は窺えなかった。
然而,对方是能够左右充满恶劣之徒的朝廷的人物,即使是静子也无法弄清楚前久的真实意图。
「ははは。少し肩に力が入っているようだ、そう身構えずとも宜しい」
“哈哈哈。你好像有点紧张,不用太拘谨。”
それだけ言うと前久は静子に近づいて、彼女の髪に一本の簪を挿した。
只说了这句话,前久靠近了静子,给她的头发插上了一支饰针。
それは艶(つや)めく黒檀の芯材に、桃色をした瑪瑙(めのう)で桃の花があしらわれており、そこからぶら下がる形で近衛家の家紋である近衛牡丹の精緻な羅漢彫りが揺れている。
那是一件由光泽良好的乌木做成的芯材,在上面搭配了桃红色的玛瑙做成桃花图案,下方则悬挂着近卫家族的家纹——近卫牡丹,被雕刻得非常精致的罗汉形态随着移动而晃动。
恐らくは羅漢彫りの素材が白檀なのだろう、少し甘さを感じさせる華やかかつ、どこかお線香を思わせるような上品で高貴な香りが漂った。
可能是罗汉雕刻的原材料是白檀木,微微散发着一股甜美而华丽的香气,给人一种高雅而贵气的感觉,让人想起香火正在缭绕。
「これだけの大仕事を見事成し遂げた娘に対する親心だよ」
“这是父母对那个成功完成如此重大任务的女儿的关怀之心。”
静子の肩を軽く叩きながら前久が告げる。静子からは見えないが、少し離れた場所で控えている才蔵が眉根を寄せて前久を眺めていた。
前久轻拍了静子的肩膀说道。静子看不到,但稍远处的才藏皱起了眉头看着前久。
才蔵の視線を気にすることなく前久は、ひらひらと彼に向けて手を振ってみせる。
前久毫不在意才藏的眼神,向他挥手招呼。
「は、はい。ありがとうございます」
"是的,非常感谢"
「そう畏まらずとも良い。本来なら一緒に茶でも一服したいのだが、私もそろそろ準備をせねばならないようだ」
“不用那么拘束。虽然本来我也想与你共喝茶,但现在我也该开始准备了。”
前久の言葉を耳にして静子は思わず周囲を見回した。すると彼女の視界に静子に声を掛けて良いものかどうか迷っている小姓の姿が映る。
听到前久的话,静子不禁四处张望。这时,她的视线落在一个犹豫不决地想要与静子搭话的小臣子身上。
そろそろ静子に準備を促さなければならないが、前久との会話に割って入れるはずもなくやきもきしている様子だった。
差不多该提醒静子准备了,但插不进前久的谈话中,看起来有些焦急。
「その様ですね。またお時間のある折に、ゆっくりとご一緒いたしましょう」
“是这样啊。等您有时间的时候,我们再慢慢一起去吧。”
「そうしましょう。何やら我が娘(・・・)は多くの仕事を抱えているようですし」
“我们来这样做吧。看起来我的女儿(…)好像承担了很多工作。”
前久はやたらと『自分の娘』という点を強調して話していたのだが、その意図を静子は理解できなかった。
前久不停地强调“自己的女儿”这一点,但静子无法理解他的意图。
かねてからワーカホリックなことに苦言を呈されていたため、やんわりと注意をされていると考え、そこまで思い至らないのだろう。
由于长期以来批评工作狂的行为,因此可能会被轻轻地警告,未能想到会有那样的结果。
「……少し減らすよう努力いたします」
“……我会努力减少一些的。”
下手に言質を取られては敵わないと思った静子は、早々と会話を打ち切って一礼をするとその場を去る。
心想被取得言辞作为证据是无法匹敌的静子,于是在迅速道别后离开了现场。
前久は彼女の後姿を穏やかな笑みを浮かべて見送りながら、誰にともなく呟いた。
前久面带温和的微笑,看着她的背影离去,无意识地喃喃自语。
「さてさて、我が娘のもう一人の保護者はどうでるか……」
“那么那么,我的女儿的另一个监护人会如何决定呢……”
そこにいたのは静子に対し情愛を示す父親ではなく、朝廷という生き馬の目を抜く伏魔殿の主たる関白の姿があった。
那里出现的不是表现出感情的父亲给静子看,而是揭穿朝廷真相的神秘大厅之主、关白的身影。
一方、急いで自分の部隊へと戻った静子は、先ほど前久から貰った簪を確認しようと手鏡を取ろうとしていた。
然而,急着返回自己的军队的静子,想要确认刚刚从前久那里得到的簪,于是拿起了手镜。
自分の荷物が入った行李(こうり)に向かおうとした静子の視線の先に、本来ここにはいない筈の人物を見つける。
静子朝着装有自己行李的行李箱走去,目光所及之处,发现了一个本不应该出现在这里的人。
悪戯(いたずら)が成功したような笑みを浮かべる信長を見て、静子は慌てて馬から下りた。
看到表情带着恶作剧成功的笑容的信长,静子慌忙从马上下来了。
静子の行動によって信長の存在に気付いた周囲も、彼女に倣って馬から下りて控えようとする。
周围的人们注意到信长的存在,是因为静子的行动,他们效仿着她从马背上下来。
「そのままで構わぬ」
"无需改变"
信長はそんな彼らの様子を声だけで制すると、前久と同じく静子の髪に一本の簪を挿した。
信长看到他们两人的表现,仅用声音就制止了他们,接着像对待之前的久龙一样,为静子梳理头发并插上了一根簪子。
信長が挿した簪は、前久のそれとは対照的にいぶし銀の一本簪に、一点大きく透明なガラス玉があしらわれており、その内部に織田家の家紋である織田木瓜紋が浮き上がって見える見事なものであった。
信长插的簪子是一根呈现银灰色的单管发簪,与其前面经久不衰的簪子形成鲜明对比。簪子上镶有一颗明亮的透明玻璃珠,珠子内部呈现出織田家的家徽──織田椿纹,精美绝伦。
自分の視界からは見えない位置に挿されている静子は、前久と信長の行動に困惑する。
静子被插入自己视线看不到的位置,对前久和信长的行动感到困惑。
(二人とも簪をくださったけれど、流行っているのかな?)
(两个人都送了我发簪,这是流行吗?)
「褒美を取らす」
"让奖励靠晚"
静子の困惑に答えることなく、信長は豪快に笑いながらその場を立ち去る。
信长豪爽地笑着离开了那里,没有回答静子的困惑。
後に残されたのは二人の目的が判らず戸惑う静子と、家紋が施された簪から何となく二人の思惑を察した静子の配下たちであった。
留下的只有不知道两人目的的困惑的静子和能从镶有家徽的簪子中感知到他们思惑的静子手下们。
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